風鳴舎

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発達障がい?特別支援教育って何だろう?[第1話]

ADHDの生徒から言われた一言「お前とは、もう離婚する!」

 A君は、落ち着きが無く、がまんができない、友達を叩く、忘れ物が多い、整理整頓ができない・・・悪いところばかりが目につく生徒でした。「またお前か」「どうしていつもそうなんだ」「何度言ったら分かるんだ」という気持ちになってしまいます。
 ADHDの特性から、成功体験が少なく叱られることが多いため、可愛がられる体験に乏しく、いつも周囲を父性的な空気にしてしまいがちなのです。お花畑の中を歩いていくと、A君の周囲の花が枯れていく、そんなイメージです。 
 だからこそ、可愛がらなければいけない、そして成功体験を重ねないといけない・・・・分かっているのですが、つい叱ってしまいます。
 滑り台の階段を友達が昇ろうとした時、下から友達の足を引っ張って落とした。学校で研究会がある日、訪れた他校の先生方の車にホースで水をかけた。校舎から校舎をロープでつなごうとした、家にあった自分の美術作品を着払いの宅急便で学校に送りつけてきた・・・。
 A君には全てに理由があります。滑り台が安全かどうか自分が最初に滑って確かめたかった。他校からの先生方をおもてなしするため、車を洗車したかった。何かあった時に、それぞれの校舎にいる人達が素早く連絡をとれるようにロープでつないだ、自分の作品展をしようと思った・・・。
 A君はいつも自分の中にスイッチがあり、そのスイッチを大人に渡すことができません。そして、いつも一人ぼっちになってしまいます。ブレーキの効きが悪い車に乗っているようなA君。ガードレールにぶつかりながら何とか進んでいるようなものです。
  ある時、教室に行くと、友達を机の上で横にして、ロープでグルグル巻きにしていました。私は、ついカッとなって怒鳴りつけてしまいました。
「コラッ!何やってるんだ!」
びっくりした様子でA君は涙目になりました。
「知らんわ!クソジジイ!お前とはもう離婚する!」
そう言うと泣きながら走って行ってしまいました。
(離婚するって、結婚してたのか)
行き先は分かっています。砂場です。大きなシャベルで穴を掘っています。何かあるとこの方法で落ち着くのです。私はその様子を暫く見ていましたが、落ち着いたかな、と言うところで出て行きました。
A君が・・「お前の落ちる穴だ!」
「それ言ったらだめじゃん」
「フン、うるさい!」
「できた!落ちてみろ」
「落ちてみろ?」
「落ちてください」
私は仕方なく、歩いて行って穴に落ちました。
A君が落ち着いたのを確認してから砂場の脇に座らせて話をしました。自分のしたこと、悪かったところ、どうすれば良かったかを順を追って分かるように話しました。理由は、昨日のテレビで観た医療ドラマの影響で、緊急手術が必要だと思ったのだそうです。落ち着いて話していると、A君は自分の悪かったところを素直に認め、今度からはもうしない、と約束します。でもまた何かするでしょう。それがA君です。
 自己コントロール力の弱いA君にとっての抑止力になるものを見つけなければなりません。ガードレールから落ちてしまうような、取り返しのつかない過ちをしないために。一緒に歩いていく信頼のおける伴走者でありたいと思いました。そのために、私自身が心の余裕を無くさないように、ぼつぼついこうと思いました。

 

2015.9.14 更新

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