英国ブリストル市にある「playing out」=ストリートプレイを推進する団体
記事:関山隆一 (NPO法人もあなキッズ自然楽校 理事)
1. イギリス・ブリストル市の団体「playing out」の訪問
私は、2015年、2016年にイギリスの遊びの環境や子どもの遊びを支援する団体を訪問させていただく中で、ブリストル市にある「playing out」というストリートプレイを推進する団体を訪れました。ストリートプレイとは、家の前の道路を封鎖して子どもたちのための遊び場をつくる活動です。
ブリストル市では路上駐車が常態化し、家の前で子どもたちが遊ぶ光景がなくなってしまいました。家の前で子どもが遊べない状況に、4人のお母さんたちが立ち上がり、市役所に直談判。その結果、道路封鎖が認められ、イギリスで初めてのストリートプレイが誕生しました。
現在では、市役所にストリートプレイのために道路の封鎖申請をすることが容易にできるようになりました。4人ではじめたストリートプレイの活動は現在、ロンドンをはじめ他のまちにも波及しています。
2. 子どもファーストなまち
代表は私と同年代の女性で、彼女は昔、子どもが勝手に外で遊んでいても何の問題もなかったといいます。しかし当時は子どもが一人で遊ぶことのできない環境にあったそうです。そこで彼女たちは、その状況を社会や自治体のせいにせず、「自分たちで変える!」という熱意をもって地域社会を変えてきたのです。
2回目の訪問の際には、ブリストル市役所のストリートプレイに関する担当課の職員にも同席していただきました。担当課の方に、「近隣の住民からストリートプレイをしている人々に対するクレームが入ったらどう対応されているのですか?」と質問しました。日本では子どもの騒音問題をはじめ、クレームをした人が相手の行為をやめない限りクレームし続け、自治体が禁止看板を設置するというケースがよくあるからです。
その質問に対して担当職員は、「ブリストル市では、ストリートプレイを推奨しているので、そのクレームは跳ね返します」とハッキリと返答されました。この毅然な態度には本当に感動し、子どもファーストなまちだなと痛感しました。人々の勇気ある行動と、それを支える行政職員との連携により、子どもの遊びが保障される素晴らしい事例であると思いました。
3.子どもたちが安心して遊べるまちへ
イギリスの地域社会は、日本よりも遥かに安全な環境にはないと思います。「playing out」の代表の女性が、私たちにある動画を見せてくれて、「これは本当なの?」と言われた動画が、『はじめてのおつかい』という番組の動画でした。イギリスでは子どもが一人で買い物に行くということは法律的にも問題があり、日本ではそれが可能であるということに驚いたわけです。
イギリスに限らず、世界中の多くの国々で、子どもの誘拐や人身売買などが今でも行われる中、日本という国はカギを閉めないという家は少なくなりましたが、それでも世界で最も安全な国の1つだと思います。だからこそ地域で子どもたちの声が聞こえ、子どもの姿がみられることはそのまちにとって素敵なことだと思うのです。
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風鳴舎note
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