『弱いはつよい』が現実になった日 ― 二人の笑顔が、たくさんの人の心を動かしたボーダーレス・ランウェイ ―

『弱いはつよい』が現実になった日 ― 二人の笑顔が、たくさんの人の心を動かしたボーダーレス・ランウェイ ―

『弱いはつよい』が現実になった日

― 二人の笑顔が、たくさんの人の心を動かしたボーダーレス・ランウェイ ―

2026年7月20日、兵庫県明石市立文化博物館で開催された「ケアでつながるミュージアム オープンデイ」。

誰もが文化や芸術を楽しめる社会を目指して開催されたこのイベントの目玉の一つ、「ボーダーレス・ランウェイ」に、風鳴舎の書籍『弱いはつよい』で詩と絵を担当した二人、村上有香さん伊藤美憂さんが出演しました。

ダウン症のある二人がランウェイを歩く。

そう聞くと、「障害のある人が挑戦した一日」という物語を想像する方もいるかもしれません。

しかし、実際に私たちが目にしたのは、それとはまったく違う風景でした。

そこにあったのは、一人ひとりの表現が誰かを輝かせ、その笑顔がまた別の誰かの心を動かしていく――そんな連鎖の風景でした。


鏡の中の自分に、心から喜ぶ

本番前、有香さんは、パリコレクションなどでも活躍するヘアメイクアーティスト・歯朶原諭子さんにヘアメイクをしていただきました。

鏡を見つめながら少しずつ変わっていく自分の姿。

その時間、有香さんは終始うれしそうな笑顔を浮かべていました。

そして仕上がった自分を見た瞬間――。

その喜びようは、私たちの想像を超えるものでした。

「うれしい!」

そんな気持ちが全身からあふれ出るような笑顔。

その場にいた誰もが思わず笑顔になってしまうほど、純粋で、まっすぐな喜びでした。


一人の笑顔が、プロの心を動かした

イベント後、歯朶原さんから心温まるメッセージをいただきました。
「こんなにも心から仕上がりを喜んでくださった方は初めてでした。」
さらに、「大好きです。」という温かい言葉も添えてくださいました。

また、当日参加していた美容学生の皆さんも、有香さんの笑顔を通して、ヘアメイクという仕事の魅力や、人を笑顔にする喜びを改めて感じられたそうです。

今回のランウェイでは、衣装にも一つひとつ物語がありました。

伊藤美憂さんが身にまとった衣装は、『弱いはつよい』にも掲載されている、美憂さん自身が描いたキリンの絵をモチーフに制作されたものです。

一枚の絵が、美しいドレスとなってランウェイを歩く。

画家である美憂さんにとって、自分の作品を身にまとい、多くの人に届ける特別な時間となりました。

一方、有香さんは最初、歯朶原諭子さんが制作した紙のアート衣装で登場します。

大胆で立体的なその衣装は、まるで歩く彫刻作品のよう。

そして一度ランウェイを終えた後、その紙の衣装を脱ぐと、下から現れたのは、福祉施設を利用中の車椅子を使用する女性が描いた絵をもとに制作されたドレスでした。

描いた人。

デザインした人。

それを身にまとう人。

一人の表現が、別の誰かの表現へとつながっていく。

このランウェイは、ファッションショーであると同時に、「表現が人をつなぐアート」でもありました。


会場を包んだ、大きな拍手

二度目のランウェイ。

鮮やかな衣装をまとった有香さんは、満面の笑顔で観客に手を振りながら歩いていきました。

その姿に、会場中から大きな拍手が送られます。

伊藤美憂さんも、自分らしい笑顔で堂々とランウェイを歩きました。

誰かと比べる必要はありません。

ありのままの自分で舞台に立ち、ありのままの笑顔で歩く。

その姿こそが、見る人の心を動かしていたのです。


『弱いはつよい』というタイトルの意味

『弱いはつよい』というタイトルには、

「弱さ」と呼ばれるものの中にこそ、人と人をつなぎ、社会を豊かにする力がある。

そんな願いが込められています。

今回のランウェイでは、その言葉が目の前の風景になっていました。

有香さんの笑顔は、プロのヘアメイクアーティストの心を動かしました。

美容学生たちにとっては、仕事のやりがいや魅力を改めて感じるきっかけとなりました。

美憂さんの絵は、美しい衣装となって会場を魅了しました。

福祉施設で描かれた一枚の絵は、有香さんを包み込む作品となり、多くの人の目を奪いました。

一人ひとりの表現が、別の誰かを輝かせる。

それこそが、このイベントで私たちが目にした、本当の美しさでした。


「本」から始まった、新しい物語

『弱いはつよい』は、一冊の本です。

しかし、その中に綴られた詩や絵は、本のページの中だけに留まってはいません。

人と人をつなぎ、新しい出会いを生み、笑顔を広げ、価値観を変えていく。

この日、ランウェイを歩いたのは、有香さんと美憂さんだけではありませんでした。

詩を書く人の想い。

絵を描く人の才能。

デザイナーの創造力。

ヘアメイクアーティストの技術。

美容学生たちの学び。

そして、会場を満たした温かな拍手。

そのすべてが一つの世界になり、「誰もが自分らしく輝ける社会」を現実のものにしていました。

『弱いはつよい』。

そのタイトルは、この日、明石市立文化博物館のランウェイで、確かに現実の風景となっていたのです。

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