『保育のサウンドスケープ』著者インタビュー 高山静子先生 福田光子先生
子どもを取り巻く音の風景を知り、園の環境づくりと園内研修に生かすための連載。

第2回 おもちゃの置き方から園の音は変えられる
保育の質と音の風景をつなぐ実践のヒント
おもちゃを箱にまとめて入れるか、棚に並べて置くか。その違いが、保育室に響く音を変えます。『保育のサウンドスケープ』の著者・福田光子先生は、環境づくりと音の関係を、身近な例で説明してくださいました。
箱の中のおもちゃを動かしながら探せば、ガチャガチャと音が鳴ります。棚に並べて用意するだけでも、取り出すときの音は変わります。園の音を見直す手がかりは、毎日の保育の中にあります。高山静子先生と福田先生のお話から、今の園で始められる環境づくりを考えます。
音には保育者の関わりが表れる
「音を良くしようっていうことは、イコール保育を良くしようになるんですよね」と、高山先生は語ります。
保育室の音をつくっているのは、子どもの声、保育者の声、おもちゃや家具が出す音などです。保育者が大きな声で指示を出す場面と、子どもの言葉に耳を傾け、温かく応答する場面とでは、そこに生まれる音の風景も違います。
音を手がかりにすると、保育者がどのように子どもと関わっているか、ものの環境がどのように整っているかを、改めて考えられます。子どもとの豊かな会話が生まれる関わりや、遊びやすい環境を整えていくことが、音の質にもつながる。お二人が伝えたいのは、そうした保育と音との関係です。
例えば、ガチャガチャという音が気になったら、どこから聞こえるのかを確かめてみる。おもちゃの入れ物なのか、取り出し方なのか。音に耳を向けると、具体的に見直す場所が見えてきます。サウンドマップは、そうした気づきを職員同士で話し合う際にも役立ちます。

環境は整えているのに音に困っている園へ
高山先生によると、本書を先に読んだ現場の先生方から、特に反応が大きかったのは、第4部の音環境を改善するための設計と工夫でした。
おもちゃにも空間づくりにも心を配っている。それでも、保育室の音が気になる。そうした悩みに対して、本書では市販の吸音材を使う方法や、絨毯などの柔らかいものを取り入れる工夫も紹介しています。音が響きやすい空間を、保育者がどう見直せるのかを考えるための内容です。
高山先生は、現場の先生方について「困っているけど、どうしていいかわからなかった」と話してくださいました。音の問題を感じながらも、取り組み方が見つからなかった園にとって、具体的な方法がわかることは大きな助けになります。
忙しい保育者が読んですぐ考えられる本に
本づくりでお二人が最も大切にしたのは、忙しい保育者にとっての読みやすさでした。サウンドスケープという聞き慣れない言葉から、「難しそう」と感じる方もいるかもしれません。だからこそ、文章を短くし、文字を大きくし、図や表でわかる本にしようと話し合い、何度もこの本の編集さんデザイナさんに変更をお願いしたといいます。
高山先生は、これまでの著書では理論や根拠を丁寧に説明してきました。今回は、現場で「今すぐ環境を変えたい」と考える先生方の思いに応え、実践の方法をわかりやすく示すことに力を注ぎました。
各クラスの遊びの空間や道具、おもちゃの選び方なども、図や表を多く使って紹介しています。職員同士で同じ紙面を開き、「今のクラスではどうだろう」「まず何を変えようか」と話しやすい構成です。
園の音が気になったときに、その音を生み出している環境まで見つめてみる。本書を手元に置いておけば、日々の気づきを改善へつなげるために、何度でも読み返せます。まずは、おもちゃの置き方や会話の場面など、気になるところから一つ。次回は、音に敏感な子どもの安心と、園全体で取り組む研修について考えます。
今の保育室を見直す一冊として。
『保育のサウンドスケープ』高山静子・福田光子 著/風鳴舎|
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https://fuumeisha.co.jp/products/059